対領空侵犯措置 2013 1 27

書名 スクランブル イーグルは泣いている
著者 夏見 正隆  徳間文庫

 私の記憶違いがあるかもしれませんが、
この小説の「あらすじ」を書きます。
 沖縄近海に国籍不明機が出現。
超音速で沖縄本島を目指していることが判明。
 自衛隊の戦闘機イーグル2機が、緊急発進(ホット・スクランブル)。
イーグルのパイロットは、国籍不明機に対して、
各国の言葉を使って呼びかけ、進路を変えるように警告した。
 しかし、依然として、国籍不明機は、
超音速のまま、沖縄本島を目指す。
 イーグルは、国籍不明機の横に並び、
領空侵犯を阻止しようとするが、全く無視される。
 国籍不明機の機体には、国籍を示すマークなどなく、
それが、いっそう不気味な印象を与える。
 いよいよ、沖縄本島が迫ってくると、
国籍不明機は、亜音速に減速し、
さらに、可変翼を開き上昇し、急減速する。
ついに、沖縄上空に進入。
 イーグルは、この急減速についていけず、
国籍不明機から大きく先行してしまい、
後方で、国籍不明機は、悠々と飛び続ける。
 電子偵察機でもある国籍不明機は、
沖縄本島の上をゆっくりと飛行して、
自衛隊の沖縄基地の上空を通過、
さらにコースを変更して、
米軍の嘉手納基地へ向かう。
 電子偵察機は、嘉手納基地の上空でも、
ゆっくりと飛行して、電子偵察の機能を思う存分に発揮する。
 米軍も、国籍不明機をただ眺めるだけとなる。
自衛隊のイーグルが、国籍不明機と平行して飛んでいるので、
対空ミサイルは、発射できない。
 国籍不明機は、電子偵察という仕事が終わると、
可変翼を閉じ、超音速で加速して、沖縄本島から飛び去った。
(以上)
 国民の多くは、こう思ったでしょう。
「なぜ、撃墜できないのか。
もし、国籍不明機が爆弾を積んでいたら、大変なことになっていた。
自衛隊は、何をやっているのか。
国民を守る気があるのか」
 さて、ここで、自衛隊の内部規定である、
「対領空侵犯措置」を見てましょう。
この本から、引用します。
 「対領空侵犯措置」の内容は、
「外国の航空機が、我が国の領空を侵犯した場合は、
スクランブル機が侵犯機を領空外へ退去させるか、
または着陸させるなどの措置を取るもの」とあり、
外国のように「警告を無視したら撃墜してよい」と書いていない。
 はっきりしているのは、「退去させる」と「着陸させる」だけである。
では、撃墜できないのか。
それは、解釈の問題となる。
 現行の解釈では、「着陸させるなどの措置」の「など」の中に、
撃墜も含むとみなし、
「領空内で急迫した直接的脅威が発生した場合」に限って、
スクランブル機は、現場指揮官の判断で発砲ができるとしている。
 さて、本題に戻りましょう。
国籍不明機は、電子偵察の機能を発揮させるために、
ゆっくりと沖縄本島の上を飛び続けたので、
「領空内で急迫した直接的脅威が発生した場合」に該当しません。
つまり、自衛隊は、何もできないでしょう。
せいぜい、仲良く国籍不明機と平行して飛び続けるぐらいでしょう。
 もちろん、国籍不明機の横に並んで、警告射撃はできますが、
国籍不明機には、痛くも痒くもないでしょう。
 本屋では、自衛隊は優秀であり、
自衛隊の装備は、世界最強に近いという本をよく見かけます。
 確かに、自衛隊は強いでしょう。
しかし、自衛隊法や規定(規則)を見ると、
自衛隊は、弱い軍隊で、有事の時は、役に立たないかもしれません。
 みんな、本屋では、自衛隊の装備や作戦に夢中ですが、
私は、「軍と法律(規定)」が気になっているのです。
 軍事評論家や軍事マニアは、まるで子供が玩具を自慢するように、
自衛隊の装備を解説していますが、
私は、そんなことよりも、法的な整備の方が先だと思います。
 イーグルは泣いている。
本当に国民を守る気があるのか。

自衛隊法 2013 1 6

書名 要撃の妖精
著者 夏見 正隆  徳間文庫

 今では、イージス艦が世界最強の艦船であると、
国民の間に広く知られるようになっています。
 しかし、現実には、イージス艦は、
簡単に沈められてしまうでしょう。
 これは、日本特有の「特殊な事情」があるからです。
自衛隊法と関連法令の存在が、イージス艦を「ただの鉄の塊」と変えてしまうのです。
 イージス艦が、その能力を発揮できるようにするためには、
内閣が、関係閣僚による安全保障会議を開催して、
その会議で、「防衛出動」の答申を得なければならないのです。
その上で、内閣総理大臣は、国会の承認を得た上で、
防衛出動の発令をすることができるのです。
 しかし、こうした手法は、江戸時代の発想でしょう。
ミサイル時代の現代においては、時代遅れのものと言えるでしょう。
 そもそも、関係閣僚は、それぞれの立場があるので、
会議が紛糾するかもしれません。
 この本でも、当然、懸念されるシーンが出てきます。
本の内容とは、状況が、少し違いますが、
わかりやすいように、私が書き直しました。
 国籍不明機がイージス艦に接近。
 しかし、「防衛出動」どころか、
「海上警備行動」も発令されていないので、
イージス艦は、通常勤務のまま。
 当然、艦内では、どうするか議論になります。
しかし、結局、艦長が、現時点では、
「防衛出動」も「海上警備行動」も発令されていない以上、
「我々には、何もできない」としてしまいます。
 そもそも、国籍不明機は、単に威嚇のために、
イージス艦に接近しているのではないのかということになったのです。
 しかし、国籍不明機は、250キロ爆弾を装備していたのです。
その爆弾が、20発投下され、
あっさりとイージス艦は、海の藻屑となって消えていくのです。
 もちろん、イージス艦には、
「防衛出動」が発令されていなくても、
正当防衛の権利があります。
 しかし、急降下爆撃によって攻撃されてしまった後では、
正当防衛どころではありません。
 この本では、もうひとつ問題点が指摘されています。
イージス艦の艦長は、防衛大学文系の出身が多いという。
 つまり、戦闘のプロというよりも、
法律や規定の専門家という感じでしょう。
 これでは、国民や国家を守るよりも、
つい法律や規定を守ることに夢中になってしまいます。
これは、「法律家」の悪い癖と言えるでしょう。
 さあ、中国や北朝鮮は、どうするか。
今までは、イージス艦は海の要塞だから、
怖くて近寄れなかったでしょうが、
実際は、「ただの鉄の塊」とわかった以上、
どういう行動を取るでしょうか。
 これは、中国や北朝鮮の問題ではありません。
こんな欠陥法律を長年放置してきた日本の政治家の問題です。






















































































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